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​不動産の概要

○○市の最寄駅から徒歩圏内の住宅地で、昭和40年代にマンション所有目的で地上権設定契約を締結。地上権設定対価は区分所有持分と相殺し、地代の支払いはない。なお、固定資産税等は借地人が地上権持分割合に応じて負担するという、契約内容でした。

 今でこそ地主さんは経済的に余裕がある方も多いのですが、昭和40年代当時の地主さんはそこまで余裕のある方は少なく、金融機関も高度経済成長時代の大企業中心の融資体制で、当時はこのような契約形態が多かったのではと推測いたします。

税法上の底地価格

 地上権の付着している宅地については、

建物の所有を目的とする地上権は借地権として評価します。

 <根拠>

 相続税基本通達23−1 (借地権及び区分地上権の評価

 建物の所有を目的とする地上権及び民法第269条の2((地下又は空間を目的  とする地上権))の規定による区分地上権については、法第23条の規定の適用はなく、法第22条の規定が適用されるのであるから留意する。

 相続税(評価の原則)

 第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により  取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

​ よって地上権の付着している宅地の底地は借地権として評価します。

​  <根拠>

 底地の評価は、国税庁評価通達25には

借地権の付着している宅地については、

 借地権の目的となっている宅地の価額は、その宅地の価額から国税庁評価通達27の借地権の評価の定めにより評価したその借地権の価額を控除した金額によって評価する。

 借地権でも地代徴収権のある賃借権なら収益性もありますが、今回は地代の支払いのない地上権ですので、所有権から借地権を控除した金額では、今回の底地の適正な価格から乖離しているのではと考えます。

路線価評価

 260,000円/㎡ ×(1-0.6 )× 2,500  ㎡ = 260,000,000円

鑑定評価

1.比準価格

​ 第三者間における底地の取引から、更地価格に対する底地割合を求め底地の比準価格を求めた。

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 上記試算の底地割合13.3%は賃借権設定の底地割合のため、本件地上権との契約内容に差異があり、その点を契約減価​、さらに地代徴収権がないことによる市場性修正を考慮し、底地の比準価格を27,000,000円と査定した。

 

2.経済価値の増分から求めた価格

​ 今回は底地の価格を構成する2大要素である地代徴収権がないため、底地が同一所有者に帰属することによる、市場性の回復等に即応する経済価値の増分を、敷地権付マンションと地上権付マンションとの価格差に求め手法として採用しました。

 この手法を考えたのは、以前借地権付マンションの評価で、底地を所有する地主さんが、五月雨式に底地を借地人に売却していました。そこで今回の評価にあたり、このマンションの底地を購入された方を登記簿で調べて、お手紙を差しあげ、回答者には商品券を準備し、価格を教えて頂こうとしましたが、残念ながら回答がありませんでした。

 この方式を採用するにあたって勘案すべき事項として、

①底地売買の市場が確立していないため、売却まで相当の時間を要する。      (個別交渉の煩雑さがあること)

②底地購入対象者が購入しない場合もあること。

③マンション管理組合との交渉や売却の際の専門家の助力を要する。

④上記比準は一戸だが、総戸数70戸の売却の際は、一戸と全戸数、いわゆる単価と総額の問題があること。

 

​ 上記差額を査定し、底地価格の総和を求め、売却までの期間・リスクや、上記要因を考慮しこの方式による価格を25,500,000円と査定した。

 

鑑定価格   

 底地の取引は、一般的な流通市場での取引が極めて少なく、相続発生時や都市再開発事業を契機にわずかに取引されるにとどまる。

 以上の観点から底地取引の特殊性を考慮して、両試算価格の中庸値を採用して26,300,000円と決定した。

鑑定評価と路線価評価との開差

路線価評価    260,000,000円

鑑定価格       26,300,000円

​このように底地評価では底地の類型により大きな価格差が生じますので、注意が必要です。

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